8月15日の前後、タイムラインを開くたびに、いつもより言葉がとがっているように感じた方もいるかもしれません。終戦の日をめぐって、いろいろな立場からの投稿が並び、どちらの側にも、相手を強く責めるような返信がついていました。
子供が同じタイムラインを見ていたら、何を感じているでしょうか。そしてもし、自分自身が「一言書き込みたい」と思ったとしたら、その一歩を踏み出す前に知っておいたほうがいいことがあります。
対立の中身そのものではなく、SNSでの対立がどう見え、どう広がっていくのかという「仕組み」を知っておくと、「見る」ときと「参加する」ときで何が変わるのかが見えてきます。
子供の目線では
大人同士が本気で怒り合っているような投稿が並ぶタイムラインは、子供にとってはただ怖いものかもしれません。何について怒っているのか、そもそも意味がよく分からないまま、言葉の強さだけが伝わってくることもあります。
「なんでこんなに怒ってるんだろう」「自分もこの話に入っていったら、同じように責められるのかな」――そんな戸惑いを、口に出さないまま抱えている子もいるはずです。友達がその話題に触れているのを見て、自分だけ違う感じ方をしていたら言いにくい、と感じる子もいるかもしれません。
タイムラインの「対立」は、実は少数の声でできている
「みんなが怒っている」ように見えるタイムラインですが、実際に書き込んでいる人の数は、印象よりずっと少ないことが分かっています。
国際大学の山口真一教授の継続調査によれば、過去1年以内にネット炎上に加わったことがある人の割合は0.5〜1%程度にとどまるといいます。さらに、その中でもごく一部の人が投稿の大半を占めていることも分かっています。山口教授が分析した誹謗中傷コメントの実例では、10回以上投稿したアカウントは全体の約1.3%ながら、投稿数全体の14%を占めていました(亡くなった木村花さんへの誹謗中傷コメントのケース)。
一方で、総務省の情報通信白書によれば、SNS利用者の50.9%――およそ半数が、ネット上の誹謗中傷を見たことがあると答えています。つまり、目撃している人は多数派でも、実際に書き込んでいる人はごく一部という構図です。
0.5〜1%
SNS利用者の50.9%が誹謗中傷の投稿を目撃した経験がある一方、実際に炎上に加わったことがある人はネットユーザーのこの割合程度(総務省令和5年版情報通信白書/山口真一教授調査)。
政治的なテーマでは、この偏りがさらに目立つといいます。山口教授が紹介しているある憲法改正についての世論調査では、実際には「賛成とも反対ともいえない」という中間的な回答が35%で最も多かったにもかかわらず、SNS上の投稿を集計すると「非常に賛成」「絶対に反対」という両極端の意見が最多になっていた、とのことです。中間の声はタイムラインに現れにくく、対立する両端の声だけが目立って見えてしまうようです。
ネット上に意見を書いてる人は、全体からするとごく少数であり、偏っているという実態を自覚することが重要
出典:山口真一教授インタビュー「ネットの誹謗中傷、参加するのは「ネットユーザーの1%未満」」(弁護士ドットコムニュース)
以前の記事「子供がネットの『ウソ』にだまされないために」で触れた「タイムラインに流れてくる情報を鵜呑みにしない」という視点は、対立が目立つ場面でも同じように役に立ちます。
「見る」までは平気でも、「参加」した瞬間に変わること
ここまでの数字が示しているのは、タイムラインを眺めているだけなら、実はそれほど特別なことではないということです。半数近くの人が同じように見ています。
変わるのは、そこに一言でも書き込んだ瞬間です。政治的なテーマでは、書き込みの中身が正しいか間違っているかにかかわらず、「対立のどちらかに加わった」という事実だけで攻撃の的になりやすい傾向があります。書き込んでいる人がごく少数だからこそ、参加した投稿は良くも悪くも目立ってしまうのです。
子供にとって、これが人生で最初の「発信デビュー」になってしまう場合もあります。友達との会話や学校の作文とは違い、SNSでの発言は誰が見ているか分からず、簡単には取り消せません。最初の一歩を、最も攻撃的な言葉が飛び交う話題で踏み出してしまうのは、できれば避けたいことです。
それでも、意見を言うこと自体は悪いことではない
ここまで読むと、「何も言わない方が安全」という結論に思えるかもしれません。ですが、自分の考えを持ち、それを表現すること自体は、悪いことでも恥ずかしいことでもありません。
大切なのは、タイムラインの「対立」が実態よりも大きく見えているという仕組みを知った上で、書き込むかどうかを自分で選べることです。特に政治的なテーマで最初の発信をするなら、周りの大人が一呼吸置く様子を見せることも、子供にとって一つの手本になります。
親に知ってほしいこと
タイムラインで対立が目立つ日でも、実際に書き込んでいる人はネットユーザーのごく一部(0.5〜1%程度)です。目撃している人の多さと、参加している人の少なさは別問題だと知っておくと、子供が「自分も何か言うべきかも」と感じたときに、落ち着いて一緒に考えられます。
子供から伝えたいこと
「みんな怒ってるみたいで、ちょっとこわい。友達はもう何か言ってるみたいで、自分だけ黙ってるのも変な気がする。でも、言っていいのかどうかも分からない。」
親子で話してみたいこと
- タイムラインを見て嫌な気持ちになったとき、どうしてる?
- 何か言いたくなったとき、最初に話すのは誰?
ちょうどいいところを考えるなら
山口教授は取材の中で、こうも語っています。「不快に思っても、不快だなと思って終わりでいいんです」。感じたことを無理に飲み込む必要はなく、かといって必ず書き込んで発信しなければいけないわけでもありません。その場ですぐに決めなくても、気持ちを言葉にしておくだけで十分なときもあります。


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