子供がスマホに向かって、ひとりで長く打ち込んでいる。友達とのやりとりかと思ったら、AIだった。そんな場面に出くわす日が、そのうち来るかもしれません。
宿題に使っているなら線の引き方も考えられます。でも、悩みを打ち明けているのだとしたら、話が変わります。やめさせるのも違う気がするし、かといって何をしているのか分からないのも落ち着かない。 その居心地の悪さに、名前がついていません。
見に行くべきものが「会話の中身」だとすると、実は行き止まりになります。別の見方に切り替えると、家庭に残っている手がかりが見えてきます。
打ち明けにくい話ほど、AIのほうへ行くようです
まず、どのくらい起きていることなのかを見てみます。
AIを使っている全国の男女4,591人に聞いた調査では、AIの利用目的として「悩み相談」を挙げた人が44.33%。趣味・創作活動(40.64%)や画像生成(40.10%)を上回っていました。10代・20代に限ると、悩み相談は48.9%で最多です。HiClub株式会社が2025年9月に実施したものです。
48.9%
10代・20代がAIを使う目的の最多は「悩み相談」(48.9%)。全年代では44.33%。HiClub株式会社の調査(2025年9月・有効回答4,591件)。
相談する内容は、人間関係が70.14%、将来が47.45%、体調が36.62%と続きます。
もうひとつ、高校生104人に聞いた小さな調査があります(塾選ジャーナル)。恋愛・人間関係の相談相手は生成AIが44.2%で1位、友人・先輩が26.0%でした。ただし同じ調査で、進路や志望校の相談相手は保護者・家族が34.5%、学校の先生が31.0%で、生成AIは13.1%にとどまっています。
サンプルが104人と小さいので数字そのものは幅を持って見るべきですが、方向としては分かることがあります。なんでもAIに話しているわけではなく、話題によって相手を選び分けている。そして、AIが選ばれるのは打ち明けにくいほうの話です。
子供の目線では ― 否定されない相手だから話せる
子供の目線では
なぜそちらへ行くのか。子供の側から見ると、理由ははっきりしています。
人に相談すると、話が動きます。友達に言えば広まるかもしれない。親に言えば心配される。先生に言えば大ごとになるかもしれない。相談するという行為そのものに、コストがついているわけです。
AIにはそれがありません。何時でもいい。同じ話を何度繰り返してもいい。呆れられることも、あとで蒸し返されることもない。先ほどの調査でも、回答者は「思ったことをそのまま吐き出せる」「冷静な視点で自分の状況をまとめてもらえる」と答えています。
子供にとってこれは、逃げではなく一番安全な順路なのだと思います。誰にも言えなかったことを、はじめて言葉にできた場所かもしれません。
会話は、親には読めない設計になっています
では中身を確認すればいいかというと、そこは思ったようになっていません。
OpenAIがChatGPTにペアレンタルコントロールを導入したのは、2025年9月29日のことでした。保護者のアカウントと子供のアカウントを連携させると、次のような設定ができます。
- 「利用制限時間」― ChatGPTを使えない時間帯を決める(複数の時間枠を設定できます)
- センシティブなコンテンツの表示を減らす
- 会話をAIの改善に使うかどうか
- 音声モード・画像生成を使えるようにするかどうか
ただし、保護者が読めるのは会話そのものではありません。 公式のよくある質問には、こう書かれています。
いいえ。ペアレンタルコントロールでは、10代のお子様の会話、チャット履歴、またはリアルタイムのアクティビティへのアクセスは提供されません。
出典:OpenAI公式ヘルプ「ChatGPT におけるペアレンタルコントロールの管理」よくある質問より
通知が届く場面も限られています。特別に訓練を受けた審査担当者が深刻な自傷の懸念を認めたときと、暴力に関わる会話でアカウントが無効になったときの2つだけです。しかもその通知に、会話やチャットの文字起こし、チャット履歴は含まれません。
OpenAI自身も、こう断っています。
安全通知はリアルタイムのモニタリングではありません。すべての懸念事項を特定できるとは限らず、専門家によるケアや緊急サービスに代わるものではありません。
出典:OpenAI公式ヘルプ「ChatGPT におけるペアレンタルコントロールの管理」
もうひとつ、知っておいていいことがあります。この連携は、どちらかが黙って切れる仕組みにはなっていません。 子供の側からもいつでも解除でき、解除されれば親に通知が届く。親だけが握っている道具ではない、ということです。
これは制限というより、方針だと読めます。話せる場所であることをやめてしまったら、そこに話しに来る意味がなくなる——覗ける仕様にしないことで、その場所を成り立たせている。親としてはもどかしいのですが、子供が「安全な順路」として選んでいる理由とちょうど裏表になっています。
「家庭はどうすればいい」を書いたものが、まだありません
ここで公的な指針を探すと、手ぶらで戻ってくることになります。
文部科学省の生成AIガイドライン(Ver.2.0)は学校現場向けの資料で、家庭に関する記述は、学校が使わせる際に「必要に応じて事前に保護者の理解を十分に得た上で」という一箇所にとどまります。家庭がどう判断するかの基準は示されていません。
こども家庭庁が出している生成AI関連の資料も、読み手として想定されているのは自治体職員や保育施設の職員で、こども自身の利用については扱っていません。
学校向けの指針はあり、事業者向けの規制も動いています。間に落ちているのが家庭です。 手がかりが見つからないのは、探し方が悪いからではありません。
見るべきものは、中身ではないのかもしれません
会話が読めないなら、何を見ればいいのか。
先ほどの調査に、ひとつ手がかりがありました。子供は話題によって相手を選び分けている、という部分です。裏返せば、選び分けが働いているうちは、AIは相談先のひとつという位置に収まっています。
だとすると、見るべきなのは会話の中身ではなく、相談先の数のほうです。 進路のことを親に聞いてくるか。友達の名前が会話に出るか。先生の話をするか。AIに何を話したかは分からなくても、ほかの相手が残っているかどうかは、家の中から見えます。
もうひとつ、設定でできることもあります。「利用制限時間」を決めれば、少なくとも夜中に一人で抱え込み続ける時間は区切れます。中身を見張るためではなく、区切りを作るための設定として使うほうが、たぶん現実的です。
なお、同じ調査では10代・20代の36.9%が、AIに「いなくなりたい」「死にたい」といった相談をしたことがあると答えています。AIに話せたことがきっかけで踏みとどまることもあれば、そこで止まってしまうこともあるはずです。子供が話せる先として、人の窓口も知っておいてもらえたらと思います。
相談できる窓口
- 24時間子供SOSダイヤル(文部科学省) 0120-078-310(なやみいおう) ― 24時間・年中無休・無料
- こどもの人権110番(法務省) 0120-007-110 ― 平日8:30〜17:15・無料
- チャイルドライン(認定NPO) 0120-99-7777 ― 18歳まで・毎日16:00〜21:00
おわりに
親に知ってほしいこと
10代・20代がAIを使う目的の最多は「悩み相談」(48.9%)で、打ち明けにくい話ほどAIへ向かう傾向があります。一方で保護者は会話の中身を読めない設計になっており、家庭向けの公的な指針もまだありません。
子供から伝えたいこと
「怒られると思ったわけじゃないよ。ただ、話したら心配して、それを見てるのがしんどくなるから、先に自分で整理したかっただけ」
お子さんの中には、こんなふうに感じている子もいます。
親子で話してみたいこと
- AIに聞いてよかったことって、どんなこと?
- AIに言われて「それは違うな」と思ったことはある?
- 話すなら人のほうがいいな、と思うのはどんなとき?
ちょうどいいところを考えるなら
中身を確かめるより、相談先が減っていないかを見るほうが、いまは現実的なようです。AIが相談先の一つに収まっているうちは、選び分けが働いています。そのうえで、「利用制限時間」のような設定を「見張り」ではなく「区切り」として使う。
子供がAIに話しているとわかったとき、いちばん効くのは、たぶん取り上げることではありません。その話を、こちらにもしてもらえる相手でいることのほうです。
関連する用語
- AIチャットボット — 生成AIを使い、文章のやりとりで会話する形式のサービス・機能の総称。
- 生成AI — 指示に応じて文章・画像・音声などを新しく作り出すAIの総称。
- ペアレンタルコントロール — 保護者が子供の利用内容や時間に制限をかける機能の総称。


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