夏祭りの浴衣姿、花火大会ではしゃぐ顔、旅行先の海で見せる無邪気な後ろ姿——夏休みは、子供の「かわいい」瞬間に出会う機会がぐっと増える季節です。撮った写真を、そのままSNSに投稿したくなることもあるのではないでしょうか。ただ、その1枚には、位置情報や一緒に写った友達の顔、そして将来子供自身がどう感じるか——少しだけ考えておきたいことが含まれています。
「シェアレンティング」って何?
親が子供に関する写真や動画を、SNSなどネット上で日常的に公開することを、海外では「シェアレンティング(sharenting)」と呼ぶことがあります。「share(共有する)」と「parenting(子育て)」を組み合わせた言葉で、もともとは米ウォール・ストリート・ジャーナル紙が使った「oversharenting(共有しすぎ)」に由来するとされます。特別な行為を指す言葉ではなく、子供の成長記録をSNSに残すという、多くの家庭がすでにしている習慣そのもののことです。
子供の目線では
小さいうちは、自分の写真がネット上に公開されているという意味を、そもそも理解できません。大きくなってから、たとえば友達に「小さい頃の写真、お母さんのSNSで見たよ」と言われて初めて、自分の知らないところで大勢の目に触れていたと気づき、驚いたり気恥ずかしくなったりする子もいます。「かわいいから」「成長の記録として残したいから」という親の気持ちと、「自分の知らないところで公開されていた」と感じる子供の気持ちには、ズレが生まれることがあるのかもしれません。
投稿の何が心配されているの?
個人情報・位置情報が一緒に広がってしまう
スマホで撮った写真には、撮影場所を示す位置情報が記録されることがあります。主要なSNSは投稿時にこの情報を自動的に削除する仕組みを備えているとされますが、メールやブログへの添付など、削除されない経路もあるようです。「どこで撮った写真か」までは特定されない、というひと手間を意識しておくと安心です。位置情報を削除しても、これで安心とは言い切れないようです。文春オンラインの検証では、生成AI(ChatGPTやGoogle Geminiなど)に写真を見せるだけで、写り込んだ看板や建物、街並みといった特徴から撮影場所を高い精度で特定できることが示されています。有名な観光地だけでなく、何の変哲もない住宅街でも同様だったといいます。自宅の外観や最寄り駅の看板など、場所の手がかりになりやすい背景が写っていないかも、あわせて意識しておくと安心です。また、写真そのものだけでなく、名前・通っている園や学校名・身長体重といった情報が、キャプションに一緒に書き込まれていることもあります。位置情報と同じように、こうした情報も積み重なると本人を特定する手がかりになりえます。
将来、子供自身が「知らないうちに」と感じるかもしれない
一度ネット上に公開された情報は完全には消し切れない、という意味で「デジタルタトゥー」と呼ばれることがあります。子供が大きくなってから、恥ずかしいと感じる写真が残っていたことで友達関係に影響したり、親子関係がぎくしゃくしたりすることも考えられます。個人情報の流出や写真の無断利用、いわゆる「デジタル誘拐」のリスクも、JPAC BLOGなどで指摘されています。
生成AI時代ならではの悪用リスク
近年は、わずか数枚の顔写真から画像を加工・合成する技術が身近になりつつあります。SNS上の写真が想定外の形で使われてしまうリスクは、これまでよりも意識しておきたい変化のひとつです。
投稿前にできる4つの工夫
顔がはっきり写らない工夫をする
後ろ姿にする、遠くから撮る、スタンプで顔を隠すなど、”誰かはわかるけれど特定はしにくい”投稿の仕方もあります。
友達や他の家族が写っている場合は一声かける
総務省「デジタル時代の子育て」の解説でも、園の行事や友人家族との外出の写真を投稿する際は、写っている子の保護者や園に確認してからにすることが勧められています。
位置情報を切ってから投稿する
撮影場所が特定されないよう、投稿前にスマホやSNS側の位置情報設定を確認しておくと安心です。自宅や最寄り駅の外観など、場所の手がかりになりやすい背景が写っていないかも、あわせてひと目チェックしておくとより安心です。
本人にも一声かけ、意思を確認する
投稿する前に、「これSNSに載せてもいい?」と本人に聞いてみると安心です。まだ小さくても、聞かれれば「イヤ」を表現できることがあります。答えられる年齢になったら、なおのこと本人の気持ちを大切にしたいところです。
どうしても顔がよくわかる写真を残しておきたいときは、SNSに公開する代わりに、家族だけで共有できる招待制のアルバムアプリ(「みてね」「Famm」など)を使う方法もあります。無料で使えるものが多く、SNSに投稿するより気軽に「残す」だけができます。
旅先でのスマホとの付き合い方全般については、帰省や旅行、スマホとどう付き合う?でも取り上げています。あわせて参考にしてみてください。
親に知ってほしいこと
シェアレンティングは「投稿してはいけない」という話ではありません。位置情報・写り方・投稿のタイミングを少し工夫するだけで、リスクは大きく減らせます。
子供から伝えたいこと
お子さんの中には、こんなふうに感じている子もいます。「これSNSに載せる前に、『載せてもいい?』って聞いてくれると嬉しい。前に泣いてる時の写真が回ってきて、クラスの子にからかわれたことがあって、それ以来ちょっと怖いんだ」
親子で話してみたいこと
- どんな写真ならSNSに載っていてもいい、どんな写真は恥ずかしい?
- 大きくなったとき、今の自分の写真がネットにあったらどう思う?
ちょうどいいところを考えるなら
総務省の解説でも勧められているように、顔がはっきり判別できる写真は避け、後ろ姿や遠景、モザイクなどの工夫をしたうえで、公開範囲を家族や親しい友人に絞る——そんな”ゆるやかな線引き”から始めている家庭もあるようです。
関連する用語
- シェアレンティング — 親が子供の写真・動画をSNSに日常的に公開する行為。


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